戦略の本質

戦略も人がつくる以上、その人以上のものは作ることができないわけで、結局リーダーが長期的視野を持って明るい将来を語れるかどうかが戦略の本質になるのではないかと感じた。
p420人間は主体的にコンテクスト(文脈ないし脈絡)や状況を察知しその意味を言語化しダイナミックなコンテクストの中で持てる知識や技能を行使していく。つまり人間の世界は客観的事実ではなくその都度のコンテクストに依存する「解釈」により成り立っている。
「要するに思考は現象より重要であり、思考は現象に先行する。さらに言えば理念が人間にどう作用するかより人間が理念に向かって何を為すかがより重要であり現実的であるのだ」
戦略10の本質
1.戦略は「弁証法」である ヘーゲル弁証法で言えば、戦略は絶えず「正」「反」「合」のプロセスで生成発展しているといえる。彼我のダイナミックな相互作用を把握し大戦略、軍事戦略、作戦戦略、戦術、技術の重層関係の矛盾を綜合するのが戦略である−毛沢東・バトルオブブリテン
2.戦略は真の「目的」の明確化である いかなる戦争も政治目的に奉仕しなければならない。したがっていかなる戦争も政治指導者によって決定され、指導され、方向づけられなければならない。
3.戦略は時間・空間・パワーの「場」の創造である 毛沢東−根拠地 北ベトナム−ジャングル サダト−「限定戦争戦略/局地空中優先圏」 「戦いには必ず勝てる機会がある。それをつかんで全力で立ち向かっていけば道は開ける」
4.戦略は「人」である リーダーシップの本質は誰を選ぶか、誰を持ち上げるか、誰を抑えつけるか、誰の首をすげかえるかの判断を伴う人事である
5.戦略は「信頼」である
6.戦略は「言葉」である
7.戦略は「本質洞察」である
8.戦略は「社会的に」創造される
9.戦略は「義」である
10.戦略は「賢慮」である 賢慮型リーダーは個人の全人格に身体化している高質の暗黙知を認識と実践の「徒弟制度」を通じて組織の全レベルのリーダーに伝承し自律分散型リーダーシップを発揮させ組織のソフトパワーを最高度に発揮させる。
賢慮型リーダーシップの五つの能力
①他者とコンテクストを共有して共通感覚を醸成する能力
②コンテクスト(特殊)の特質を察知する能力
③コンテクスト(特殊)を言語・概念(普遍)で再構成する能力
④概念を公共善(判断基準)に向かってあらゆる手段を巧みに使って実現する能力
⑤賢慮を育成する能力
p459戦略の本質は存在を賭けた「義」の実現に向けて、コンテクストに応じた知的パフォーマンスを演ずる自立分散的な賢慮型リーダーシップの体系を創造することである。

戦略の本質 (日経ビジネス人文庫)

戦略の本質 (日経ビジネス人文庫)