チェンジ・ザ・ルール

まさに自分達が抱えている悩みと同じ。商品ではなくバリューを売るという発想にいかに肉付けしてその方向に組織として向かうことができるか。
p183「ということは、・・・いちばんの問題は自分たちだったということか」スコットが言った。
「どういう意味だ?」
「レニー、クライアントに接しているのは、ゲイルの営業部隊とマギーのKPIソリューションズだ。この二つが問題かもしれない。ゲイルたち営業部隊は、テクノロジーを売るという感覚が心地よすぎて、バリューを売るという考え方に彼女たちの頭を切り替えさせるのは容易ではないだろう」
「それは、僕も気づいていた」レニーが言った。
「マギーも同じだ。クライアントを相手に、カルチャーチェンジを起こさせることに怖気づいている。我々もそうだ。そんな根本的なルールから変えようという話をしているのだから、これもまたカルチャーチェンジと同じだ。私の言っていることの意味がわかるかい?いちばんの障壁は市場や製品ではなく、我々自身だということだ。それに対して、これからどう対処していくかだ」
p204「我々はいま、岐路に立たされている」スコットが説明を続けた。「これまでの5年間、我が社は驚異的なペースで成長してきた。いつか、この成長率を維持できなくなる日が来ることは、みんなわかっている。重要なのは、スローダウンすべき時がいまなのか、あるいはこのままこれまでの成長率を維持するためにもう少し努力を続けるべきなのか・・・いま、その決断が迫られている」
ゲイルにはスコットの説明が腑に落ちなかった。「スローダウンしたり、これまでの成長率を維持したりするのを、まるで自分たちの意思で勝手に決められるように聞こえるのですが・・・。市場の客観的な環境は関係ないんですか」
「ああ、そのとおりだ」スコットが答えた。「どうするかは、我々の手で決めることができる。これまでのやり方を続けることもできる。しかしその場合は、市場が急速に飽和状態に近づきつつあることを、まずはっきりと認識しなければいけない。逆に、これまでのやり方を刷新することもできる。これには大きなリスクが伴う。だが、はっきりとしたビジョンと勇気、それに何としても変化を起こすんだという確固たる決意があれば、市場には無限の可能性があると思う。これまでに私たちがやってきたことは、この先の無限の可能性に比べれば、取るに足らない」
p207「ああ、ゲイルそのとおりだ。これまでのやり方では、もちろん絶対無理な話だ。しかし今後も成長し続けるという選択肢を取るなら、これまでとまったく違う戦略と戦術が必要だ。変化が求められる」
「どんな変化です?」ゲイルがつっかかるような口調で訊ねた。
「単にテクノロジーを販売するという考え方から、バリューを販売するという考え方への切り替えが求められる」スコットはきっぱりと答えた。
p210「レニーがさっき言ったとおりよ。全員が同じ目的意識を持っていて、結果を出すことにすべてが向けられていたの。これまでとはまったく違うわ。コンピューターのデータを正確にすることが目標ではなく、結果を出すことが目標だったの。<ドラムバッファーロープ>のいいところは、みんなの目的意識を一つにして努力を集中できるところよ。本当に大切なのは何か、それをはっきりと認識させてくれる点ね」
p229マギーが特に気を配ったのは、「スケジューリング/実行」プロジェクトに充てられたスタッフ全員に何が重要なのか正しい認識を植え付けることだった。「スケジューリング/実行」プロジェクトはコンピュータ画面の体裁をよくしたり、レポートを見やすくするのがいちばんの目的ではない。重要なのは利益を向上させるために、必要なときに必要とする人のところに、適切な情報を用意することだ。システム・インテグレータにとって、これは大きなパラダイムシフトだった。この意識改革はまる一週間かけて行われた。最初の二日間はTOCコンサルタントが、残りの三日間はレニーが担当した
p298「わかったかね、ゲイル。我々のテクノロジーを用いれば、確かに限界は取り除かれる。しかしこうした限界が存在することで自然発生的に作られたルールについては、我々はつい最近までまったく無視してきたんだ。どう取り扱ったらいいのか、まったく考えもしなかった。(中略)「テクノロジーの”物理的な”限界を取り除くだけでは不十分だ。たとえ表面的には取り除かれたとしても実はまだ存在している。ルールが変わらなければ完全になくなることはない」「バリューを実現する、つまり利益を増やすためには”テクノロジーは必要だが、それだけでは不十分”(Necessary but not sufficient)ということだ。今年になってから、私たちはクライアントに対しバリューを提供することに傾注してきた。もはやテクノロジーだけにとらわれていない。クライアントに対し潜在的なバリューを実現し提供するにはどんなことだってする。たとえそれがソフトウェア会社としての活動の範囲を超えていたとしてもだ」
p302「180度方向転換するのは結構ですけど、それがどんなに大変なことかわかってますか。とにかく時間がかかります」「テクノロジーの販売からバリューの販売に切り替える。そのためにはすべての関係者、つまりシステムエンジニア、営業スタッフ、インプリメンターすべてが認識を共にして一緒に切り替えようとする努力が必要だ。」

チェンジ・ザ・ルール!

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